奥深いバラの世界 2

日本を代表するバラの育種家で、ひょうごローズクラブ理事のイタミ・ローズ・ガーデン代表の寺西菊雄さんを訪ねました。 
最寄り駅の阪急新伊丹駅前には「ローズレー梅ノ木」というバラ園があり、イタミ・ローズ・ガーデンの前の道路にも道沿いにバラが植栽されていました。

【プロフィール】

1934年(昭和9年)兵庫県生まれ。
天津乙女など多数の優良品種を作出した世界的なバラの育種家。
2007年に国営越後丘陵公園(新潟県長岡市)で開催された第1回国際香りのばら新品種コンクールにおいて「フラグラント・ヒル(HT)」が 金賞及び特別賞(国土交通大臣賞)を受賞。

寺西さんは、50年にわたりバラの育種家として100種近くの品種を作ってこられました。バラを育種する際には、色、良く咲くこと、香りにこだわるとのことです。寺西さんにお気に入りのバラの品種についてお聞きしました。

寺西さんがつくられたバラの品種

◆天津乙女
寺西さんの第1号、26歳の時の作品で、バラ育種家としての寺西さんの名前に広めました。海外でも高く評価されている黄色の大輪種で、1960年の作。宝塚歌劇団のスターの名前が付けられた黄色いバラです。


◆マダム・ヴィオレ(写真)
薄紫色の切り花に適した1981年作のバラです。人気のある品種ですが、寺西さんは、青いバラの育種による創出を目指しています。


◆ニュー・ウェーブ
薄紫ピンクのウエーブする2000年の作品で、寺西さんが「独特の咲き方をする。」とおっしゃるユニークなバラです。


◆ローズ・オオサカ
真っ赤なバラ。昨年開催された「世界バラ会議大阪大会2006」のシンボルローズ。別名マイ・レイコ。奥様の名前を付けたバラです。


長年にわたるバラの育種経験に基づいたこだわりのバラの育て方についてお聞きしました。基本に忠実な育て方が大切とのことです。


バラの育て方の基本

植栽後1年目は良いが、それ以降は肥料が不足していることが多い。まず寒肥をやる。4月から5月に肥料をやり過ぎると、きれいな花が咲かない。6月から8月にかけては月に1度バラ用の肥料をやる。春も秋も花が終わるとお礼肥。バラは、しょっちゅう花を咲かせるので、肥料が多くいる。

1種類の殺菌剤をずっと使うと効かなくなるため、3種類程度の殺菌剤を用意し1つの殺菌剤を3回使ったら次に他の殺菌剤を3回使う。このようにして、3種類位の殺菌剤を順番に使うようにすると殺菌剤の効き目が持続する。
また、ウドンコ病や黒星病の殺菌剤に混ぜて、害虫に抵抗性がつかないニームオイルをベースにした忌避剤を7日から10日に1度施用すれば、忌避効果により害虫が寄りにくくなるため、殺虫剤を使う回数が減り、栽培者の健康のためにも良い結果をもたらすことになる。

なお、薬剤を散布する際、使用説明書の指示よりも薄め(例えば1000倍で使用する指示がある場合に1200から1300倍に薄める。)にし、その分散布量を増やすようにした方が消毒の効果があがる。

秋の剪定は、8月25日から9月10日までに行う。バラは剪定後40日から50日で花が咲くので、適期に剪定しなければ、10月の良い時期に花が咲かない。ツルバラは、長く伸びた枝を折れないようにまっすぐにくくりつけておくだけで良く、冬に全部ほどいて、いらない枝を剪定して誘引する。
冬の剪定は1月半ば?2月の間に行う。古い枝を切り、新しい枝を主とした仕立て方とする。古い枝を残すと芽が出てきても花が咲かない。背を高く仕立てると、花が高いところばかりに咲くので、低く剪定することも大切である。


寺西さんによると、今年はいつまでもバラが咲いており、虫も多く、冬を越す虫も出てくるかも知れない、とのことです。こんなところにも、地球温暖化の影響が出ているのかも知れません。

イタミ・ローズ・ガーデンの美しく立派なパンフレットに掲載されているバラの写真は、すべて寺西さんが自ら写したものだそうです。バラの写真は、花が開ききらない形が良いうちに写すのがポイントだそうです。多くの面でこだわりを持ちつつバラの育種をなさっている寺西さんらしいパンフレットだと感じました。