世界の文献に見るバラの話

「ホルタス26・夏号」
1993年 HORTUS No. 26 Summer 1993

ホルタス誌(HORTUS)はイギリス・ウェールズで発行されている園芸季刊誌で、1987年の創刊から、現在まで続いている。園芸誌として幅広い内容で、特に文化史の記事が多いのが特徴である。また、世界各地のガーデニングの様子が活き活きと報告されている。1993年のバラの特集号は興味深い内容が多岐に渡り掲載されている。その中の記事から2回にわたり『バラと共に育てる植物』(Companions for Roses Jane Taylor p.67-74)を要約して紹介する。今回はバラの足元を飾る植物の部分を関西地方で育て方についての私見を交えながら紹介する。

兵庫県立大学専門職大学院     
緑環境景観マネジメント研究科    
教授 能勢健吉


『バラと共に育てる植物』その1


冬も楽しめる常緑の低木や亜低木

バラの庭が家の中から見えなかったら、葉を落とした冬のバラ園の様子も問題にはならないだろう。もし室内から見えるようだったら、常緑の低木をある程度組み合わせた方が良い。それがカラーリーフで特徴のある形態の植物なら、夏になって開花期が終わった後でも映えて見えるであろう。生育旺盛なバラとの組み合わせなら、セージの紫色の品種は組み合わせが良いと思われる。灰色がかった小さな葉は、それぞれの植物と上手く調和する。ヘーベの園芸種ミセス・ワインダー 'Mrs.Winder'は夏の暗緑色、冬季のチョコレート色の色彩がとても良く、バラに似合う。

注:関西地方ではヘーベの仲間は高温多湿やの寒さで傷む品種が多い。特に小型で毛羽立った葉の品種は育て難い。園芸品種ミッドサマービューティーは特に育てやすい。


シルバーリーフ

多くのバラにはシルバーリーフが組み合わせやすい。サントリナ、カレープラント、ヘリクリサム、アリッサム・サキサチーレなどは、それぞれの植物の個性的な色彩や質感で楽しませてくれる。特に原色の鮮やかなバラとの組み合わせの場合には、花色の強さを和らげてくれる。

注:関西ではラベンダーもシルバーリーフの植物として好まれる。日当たり、通風よく育てる事が大切である。


マット状の縁取り

もう少し小型の縁取り用植物として、オーブリエチア、アラビスなどはよく用いられる。軟らかい感じの茎葉が周囲に伸び、必要ない部分を取り除くと整った形の縁取りとなる。

注:セラスチュームも同様の扱いが可能である。これは夏に半日陰になるような場所では何年かは充分に草姿を美しく保つが、徒長すると葉が落ちた茎が目立ち見苦しい。


レイズドベッドの草花

レイズドベッドに植えた灰色のノコギリソウは赤花のパティオローズ'トプシ' ('Topsino')の足下に植えると良い。赤やピンクのバラには灰緑色の葉を持つダイアンサス類が良いだろう。白、ピンク、赤の花がバラに良く似合う。セダムの仲間もバラの下に植えられることが多い。


コーカサスキリンソウ Sedum spurium 'Atropurpureum'、白雪ミセバヤ Sedum spathulifolium'Purpureum'などを黄色のパティオローズの下によく植えるが,これは雑草抑えとしても有効である。カンパニュラの中にも組み合わせて育てたいものがある。カンパニュラ・ポシャルスキアナ Campanula poscharskyana、ホシギキョウ C. garganica、オトメギキョウ C. portenschlagianaなどはマット状に生育し、花時はこんもりと茂っている。フウロソウの仲間 Geranium cvs.も似合う。

注:白雪ミセバヤは高温多湿に弱い。