奥深いバラの世界 4

「魅惑」に魅せられた漢文の先生、(財)日本ばら会理事 上沼匡一(かみぬま きょういつ)さんのご自宅を訪ねました。

上沼さんは、切り花の出来ばえを競う競技花の魅力にひかれ、これまでに数々の輝かしい賞を受けられた(財)日本ばら会関西支部の至宝です。
1999年「武州」で、2000年「メルヘンケーニギン」でそれぞれ日本一になり、また2002年には「ローラ」の二輪花で理事長杯を受賞。
他にも数々の栄冠に輝かれています。

今回は、 ひょうごローズクラブの会員でもある上沼さんに「競技花」の魅力について語っていただきました。



バラ栽培へと誘われたきっかけは?


父がキクを栽培し、コンテストにも出品していたことがベースにあると思います。元々土いじりが好きでしたが、父と同じキク栽培には抵抗があった中、大学時代に「ブルームーン」に出会ったのを機にバラの世界へ入りました。


バラへの想いを語って下さい。


完璧にできた一輪は、触るのが恐いくらいの芸術品。色、形、香り、葉一枚に至るまで計算されつくされた完成品に強く惹かれます。


花の出来上がりは、品種改良家の力が3割、栽培技術が5割、天候が2割です。現在160品種、320本ほど栽培し、そのうちコンテスト向きは12品種程です。新しい品種も増やしながら、その時々のうまく咲いたものを出品しています。

「魅惑」の栽培に凝っていますが、奥深いです。あちこちから穂木を入手し、「魅惑」だけで200株ぐらい作っては捨てました。遺伝子が不安定で、気候、血筋によって、ピンク色、クリーム色、黄色と発色に違いが出ます。競技花には特性が必要です。標準タイプの「魅惑」と一味違うもの、発色の鮮やかさ、しんの高さ、花の形等がポイントになります。
「魅惑」の栽培家は他にもいますが、自分のものが一番美しいと自負しています。今の目標は「魅惑」でこれはという花を咲かせて日本一をとることです。


競技花栽培のこつ


鉢のほうが肥料や水のコントロールがし易く、9号ぐらいのプラ鉢が適しています。根をぎゅっと締めていじめた方が花は危機感をもって良く咲くようです。夏にいいシュートがでたら、秋にいい花が咲きます。赤玉のような水持ちの良い土、腐葉土などを吟味して入れます。肥料は経験の中で、品種、土、作り方に合わせます。日当たりのよい、風があまり当たらない所で栽培します。



コンテストへの持ち込みは審査時間に慎重に合わせます。東京のコンテストに出品する場合は、早朝に切り、1時間ほど水あげし、開花の状態をみて、品種数の3倍ほど選び、特別の容器に入れて新幹線で持って行きます。審査の15分ぐらいが勝負。緻密な計算が必要です。



コンテストにチャレンジしたい初心者の方へ


まずはコンテストを見に行って下さい。見たら、やりたくなります。毎年5月に大阪の「咲くやこの花館」や10月に長居植物園で開催されるコンテストには初心者の部もあり、バラ会に所属していなくても出品できます。初心者にはテコナ、ジェミニ、メルヘン、コンフィナンス等コンテスト向きで栽培しやすいものがお薦め。キク栽培のようなルールはないので、取り組み易いです。作品を持って行って、愛好家同士でわいわいやることが楽しいのです。
参加者は女性のほうが多いです。30代の方もいますが、高齢化が進み、住宅事情からも出品者は減少気味。老若男女を問わずどんどん出品して下さい。


お話を伺って、競技花の繊細な世界の醍醐味を垣間見させて頂きました。
夢を実現されて、日本一の「魅惑」のたたずまいを、是非バラ愛好家に鑑賞させて下さい。